深淵教典

水面に揺れる

今日は水着を買いに行った。数日前、ガーディアン先輩から連絡があった。先輩の友人によると、指定水着で海へ赴く者は極めて珍しいそうだ。「一緒に買いに行くか?」そう誘われたので承諾した。バイトも始めたし、資金面は問題ないだろう。指定の時間に都会で...
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精神機械化

ティッシュ配りのバイトをした。それは、渡すだけ。ただそれだけだが、向き不向きがあるだろう。しかし、俺は発見した。この仕事の極意を。それは、感情を封印し、意思を捨て自らを配るだけの機械へと変えることだ。断られようが無視されようが、何も感じない...
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魂の牢獄

終業式を終えた俺たち異端の六芒星は、映画館へと足を踏み入れた。だが、この空間は俺にとって牢獄にも等しい。六人の見たい映画が完全に一致することなどありえないからだ今回も例外ではなく、誰かが己の魂を押し殺さねばならなかった。選ばれた映像作品に興...
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強制招集

期末試験が終了し、夏休みまでのカウントダウンが始まった。美術部に来ていた俺はそこで直近の悩みである「水着」について相談した。節約の名のもと、学校指定の水着で済ませるのは許されるのか。この問いに答えを得るべく、俺は美術部の先輩たちに意見を求め...
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歪む刻の法則

もうじき、夏が臨界点を迎える。太陽が大地を焦がし、陽炎が揺らめく季節。今年は時の流れが早く感じられる。重力は時を歪めるそうだが、俺が重力系の能力に目覚めたわけではない。なぜかはわかっている。俺の世界に友と呼べる存在が現れたからだ。楽しい時間...
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蒼の入口

昨日の帰り際にファングが呟いた言葉が俺の中で波紋を広げたていた。「夏休み入ったら、みんなでプール行こうよ。」その一言に即座に応じたグラトニー。つまり、これは男子も含めた召集命令。逃れられぬ定めということか。俺にあるのは、学校指定の水着のみ。...
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交わる思い

例のファミレスにて、期末テストに備えた勉強会が開催された。前回のメンバーに加え、今回はドリーマーも参加していた。ヴァンガードは相変わらず一人で修練している。前回は姿を見せなかったドリーマーに今回参加した理由を尋ねた。彼女は少し恥ずかしそうに...
深淵教典

沈黙の知らせと六芒星の集い

久しぶりに俺たちの馴染みのファミレスに集った。どうやら皆、この場所を特別な拠点として気に入っているようだ。俺は心の片隅で呟く。同じメニューばかりで飽きたりしないのか?俺の労働への挑戦は終焉を迎えていた。一週間以内に連絡すると告げられたが、沈...
深淵教典

空が泣いてる…天気予報では晴れだったはずだが、雨が降った。傘を持っていなかった。今日は部室に先輩達はいない。一人で行くのも決まりが悪く、雨がおさまるまで図書館で待つことにした。図書館へ行くと見知った顔が二人、ヴァンガードとサイファーがいた。...
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八百万の神

世界には八百万の神々が存在するという考え方がある。至る所に神が宿り、人々を見守っているのだとか。ある日のことを思い返す。隣の席で女子たちが笑いながら話す声が耳に入る。「昨日のドラマ見た?」「◯◯君、マジ神!」その"神"という言葉に、どこか滑...