2025-09

深淵教典

予感

文化祭の振替休日で今日は休みだった。合法的に月曜日に学校へ行かなくても良いと思うと気分がいい。特に目的もなく外へ出ると、世界はすでに秋の気配が漂っていた。夏の灼熱が記憶の彼方へ追いやられ、気づけば季節は変貌しつつあった。そんなことを考えなが...
深淵教典

文化祭

文化祭当日。並の者なら、準備のために早く登校していただろう。だが俺たちは違う。俺たちは特異なる者。故に、いつも通りの時間に足を踏み入れる。”休憩所(ベルフェゴール・ルーム)”という名の怠惰な企画に呆れた担任の挨拶とともに、俺の人生最初の文化...
深淵教典

未来へ繋ぐ意思

文化祭前日。俺はファインダー先輩とともに、空き教室に展示用の絵を飾った。ディスパーサー先輩とガーディアン先輩は劇の最終調整だとかでここには来られない。彼らが何を演じ、何を魅せるのか。その全貌は未だ闇の中。「先輩たちの劇は何時から始まるんです...
深淵教典

決起会

文化祭準備が最終局面を迎え、校内は喧騒に包まれていた。どのクラスも最後の追い込みに入り、廊下を歩けば、制作方法不明の青春オーパーツが嫌でも視界に入ってくる。準備をあらかた終えた六芒星の女性たちのクラスはは「決起集会」と称し、カラオケに行くら...
深淵教典

静寂の領域

部活へ行った。今日は俺が美術室の鍵を借りた。文化祭で展示する絵を仕上げた先輩たちは、自分たちのクラスの準備に専念するのでしばらく来ないそうだ。つまり、この空間は俺だけのものだ。静寂が支配する空間で、俺はただ絵を描く。余計な会話も、誰かの気配...
深淵教典

叶わない願い

文化祭の準備期間に入り、六芒星の女性たちと美術部の先輩たちは各々の持ち場へと消えた。俺たちのクラスはいつも通りだ。授業が終われば、帰宅するなり、部活へ向かうなりしている。俺たち三人も、いつものようにファミレスへ集った。「他のクラスを見てたら...
深淵教典

偽りの仮面と再起の光

新学期から、部活中にガーディアン先輩が勉強に励むようになっていた。彼の休憩中に文化祭で何をするのか、何気なく問いかけた。「何もしないかな」何もしない? まさか先輩も休憩所…?「そうだろ?」とぼけた様子でディスパーサー先輩に話を振る。「そうだ...
深淵教典

宿命

異端の六芒星たちと集う、お馴染みの空間。その名はファミリーレストラン。そろそろ、この集いに相応しい名を考えるべきかもしれない。話題は文化祭。彼女たちのクラスはお化け屋敷を創り上げるという。その言葉に、僅かな羨望が芽生えそうになる。「休憩所?...
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休憩所

9月27日の文化祭。俺たちのクラスは「休憩所」をすることになった。学校生活に疲れた者たちに安息の場を提供する……建前はそうだ。実際は、最低限の労力でやり過ごすための選択。机と椅子を並べるだけで完結する怠惰の産物。何か提案すれば、その瞬間に責...
深淵教典

限界

今日は始業式だった。教室に足を踏み入れた瞬間、肌に馴染んだ空気が流れ込む。見慣れた光景のはずなのに、どこか違う。体育館で校長の言葉が響く。ただの音の羅列に過ぎず、意識に刻まれることはない。担任の声も同様だ。形式的なやり取りに、特筆すべきもの...