今日は水着を買いに行った。
数日前、ガーディアン先輩から連絡があった。
先輩の友人によると、指定水着で海へ赴く者は極めて珍しいそうだ。
「一緒に買いに行くか?」
そう誘われたので承諾した。バイトも始めたし、資金面は問題ないだろう。
指定の時間に都会で合流し、店を巡る。
俺の選択はすでに決まっていた。
無地、単色の簡素な水着。
しかし、店内で不意に目を奪われた。
髑髏の装飾が施された水着。深淵の使者が纏うにふさわしい意匠。
だが、脳内にディスパーサー先輩の辛辣な声が響く。
「本気でそれを着るつもり?」
虚空に響く幻聴に恐怖し、選択肢から除外した。
最終的に、先輩は濃緑、俺は漆黒の水着を選んだ。
購入を終え解散の流れになったが、確認したいことがあった。
一学年下の俺が混ざっていいのか。
問いを投げると、先輩は何の迷いもなく言い放った。
「みんなで遊んだ方が楽しいだろ?」
陽の者だ──
その無垢な言葉を聞いて、俺は少し恥ずかしくなる。
だが、それを表に出すのは癪だった。
俺は照れ隠しに、ありふれた言葉を口にした。
「先輩と遊ぶなんて、気を遣いますし…」
返ってきたのは「え、お前が?」と言わんばかりの表情。
先輩は視線を前に戻し、軽く息を吐いて言った。
「夏休みが終わったら受験勉強始めるからな」
二学期からは部活には、来なくなるそうだ。だから、美術部四人で遊びたいのだと。
胸の奥で鈍い痛みが広がる。
いずれ来ると分かっていた未来。思ったよりも早かった。
それからの駅までの道のりで、俺は先輩と何かを話していた気がする。
だが、内容はまるで覚えていない。
終焉は、いつ訪れるかわからない。
だからこそ深く刻みつけておく。
この瞬間を。