過去の手記 魔術大全 前世の記憶

過去の手記

前世の夢を見た。

これは、僕がまだ神の一柱だった頃の話だ。

神界――ゼノ・エデン

僕は闇を司る神として生まれた。

そこでは闇は恐れられ、忌み嫌われ、神々の理から外れた存在。何もしなければ、ただ滅ぼされるだけだった。

戦うしか道はなかった。

闇の力は強大だったが、神々を敵に回すには足りなかった。そこで、僕は他の神と手を組み、“光の神(ルクス・ドミヌス)”が率いる軍勢と戦った。戦力は拮抗し、神界は長き戦乱の時代に突入した。

幾千の戦を経ても、決着はつかなかった。

だが、この戦いで僕の力を目の当たりにした光の神々は、闇の力を認めざるを得なくなった。

もはや争う必要はない。

僕は盟約を結んでいた混沌の神と共に、和平交渉のため光の神々の本拠地「セレスティア」へ向かうことを決めた。

しかし、神界に平和が訪れることはなかった。
道中、混沌の神が裏切ったのだ。

気づいた時には、手遅れだった。混沌の眷属“混沌の運び屋 (カオス・ベアラー)”に囲まれていた。

「我は混沌を司る者。和平など認めるわけないだろう」

混沌の神は嘲笑とともに告げた。

闇より深い混沌の波に呑まれ、抵抗虚しく敗れてしまった。

そして、僕は神の座を失い、地上へ堕とされた。

タイトルとURLをコピーしました