俺の夢は、絵を描く仕事に就くこと。
いつか、自分の描く世界が誰かの心に響くような、そんな絵を描けるようになりたい。しかし、今の俺ではその夢に辿り着けない。もっと高みを目指すには、技術を会得する必要があると感じていた。
そんな俺が見学に足を運んだのは、美術部。この部活こそが、俺が求める力が得られる場所だと思ったからだ。
部室の扉を開けると、そこには3人の先輩がいた。
彼らからは、只者ならぬ気配が漂っていた。
俺が立ち尽くしていると、男の先輩が声をかけてきた。
「見学か。適当に見ていってくれ。」
彼は落ち着いた声でそう言うと、互いに自己紹介を交わした。
二年生の男の先輩と女の先輩二人。部活に来るのはこの三人だけらしい。
挨拶を終えると、再び自分のスケッチブックに向き直った。
俺の視線は自然と男の先輩が描いている絵に引き寄せられた。
それは静物画だった。テーブルに置かれた本が描かれていたが、まるで本物がそこにあるかのように、光と闇が精密に描かれている。俺は、その圧倒的な力を目の当たりにし、確信する。
この人となら、俺の絵は確実に進化する。
入部を決めたことを告げると、男先輩は驚くこともなく頷いた。
「おう、よろしく」
2年生の女先輩達も明るく声をかけてくれた。
「頑張ろうね!」
「よろしくな」
こうして、血の契約書(入部届)にサインをし、部活の一員となった。
力だ。
ここで己の限界を超え、新たな力を得る。
俺が、俺の手で世界を描くために。