アビス・レイヴン

深淵教典

世界の選択

街はハロウィンの装飾品がちらほら見受けられた。果たしてどれほどの者が、この祭の本質を理解しているのか。企業の思惑に踊らされる操り人形が大半だろう。そう考えると、どこか冷めた気持ちになる。それはそれとして、俺たちは”甘美なる宴(ケーキ・バイキ...
深淵教典

甘味の宴

夏の終焉とともに幕を開けた狂騒の日々。文化祭、体育祭、そして中間考査――次々と押し寄せる波に飲まれ、気づけば時間は刹那の如く過ぎ去っていた。そんな慌ただしさもひと段落し、久方ぶりに異端の六芒星たちと集うこととなった。目的地は甘味の宴。「ケー...
深淵教典

経験値

幾度目かのテストを終え、俺は確信する。確実に、成長していると。知識とは積み重ね、かつて誰かがそう言っていた。今なら理解できる。経験値を蓄積し、己を強化していく感覚…悪くない。しかし、数学――この呪われし分野だけは、いくら研鑽を重ねても成果が...
深淵教典

軋む歯車

文化祭、体育祭が終わり、次に待つのは中間考査今回はただの勉強会ではない。体育祭の勝敗により、敗者である俺たちは勝者へ供物を捧げることが義務づけられていた。その流れでヴァンガードもまた、いつものファミレスへと召喚された。ヴァンガードから僅かに...
深淵教典

体育祭

運動の祭典、体育祭。恵まれし肉体を持つ戦士たちが活躍する戦場。俺にとって体育祭とは、ただの退屈な催しに過ぎない。見どころがあるとすれば、せいぜい知り合いが出る競技くらいか。それ以外に興味はない。この感覚が間違っているのか、それを決める権利は...
深淵教典

予感

文化祭の振替休日で今日は休みだった。合法的に月曜日に学校へ行かなくても良いと思うと気分がいい。特に目的もなく外へ出ると、世界はすでに秋の気配が漂っていた。夏の灼熱が記憶の彼方へ追いやられ、気づけば季節は変貌しつつあった。そんなことを考えなが...
深淵教典

文化祭

文化祭当日。並の者なら、準備のために早く登校していただろう。だが俺たちは違う。俺たちは特異なる者。故に、いつも通りの時間に足を踏み入れる。”休憩所(ベルフェゴール・ルーム)”という名の怠惰な企画に呆れた担任の挨拶とともに、俺の人生最初の文化...
深淵教典

未来へ繋ぐ意思

文化祭前日。俺はファインダー先輩とともに、空き教室に展示用の絵を飾った。ディスパーサー先輩とガーディアン先輩は劇の最終調整だとかでここには来られない。彼らが何を演じ、何を魅せるのか。その全貌は未だ闇の中。「先輩たちの劇は何時から始まるんです...
深淵教典

決起会

文化祭準備が最終局面を迎え、校内は喧騒に包まれていた。どのクラスも最後の追い込みに入り、廊下を歩けば、制作方法不明の青春オーパーツが嫌でも視界に入ってくる。準備をあらかた終えた六芒星の女性たちのクラスはは「決起集会」と称し、カラオケに行くら...
深淵教典

静寂の領域

部活へ行った。今日は俺が美術室の鍵を借りた。文化祭で展示する絵を仕上げた先輩たちは、自分たちのクラスの準備に専念するのでしばらく来ないそうだ。つまり、この空間は俺だけのものだ。静寂が支配する空間で、俺はただ絵を描く。余計な会話も、誰かの気配...