昨日の帰り際にファングが呟いた言葉が俺の中で波紋を広げたていた。
「夏休み入ったら、みんなでプール行こうよ。」
その一言に即座に応じたグラトニー。つまり、これは男子も含めた召集命令。
逃れられぬ定めということか。
俺にあるのは、学校指定の水着のみ。
まるで冒険を始めたての初期装備。
これでクエストを受注しても許されるのか?
かつての俺ならば、そんな些事に惑わされることはなかっただろう。
記憶が蘇る。
ディスパーサー先輩に禁忌の衣を否定されたあの日。
己の美学を打ち砕かれたあの瞬間――
俺には、無理だ。
早急に対策せねば。
テスト週間が終わり次第、作戦を開始する。