経験値

深淵教典

幾度目かのテストを終え、俺は確信する。
確実に、成長していると。
知識とは積み重ね、かつて誰かがそう言っていた。
今なら理解できる。
経験値を蓄積し、己を強化していく感覚…悪くない。

しかし、数学――
この呪われし分野だけは、いくら研鑽を重ねても成果が見えない。
適性とは残酷なものだ。魔法使いに剣技を習得させても使いこなせるわけがない。
ゲームであれば転職すれば済む話だが、現実はそう甘くない。
己に備わった力のみで、生き抜くしかないのだから。

一つわかったことがある。

真正面から挑んでこそ、己の適性が明らかになる。向き不向きを決めるのは、挑んだ後でいい。
自分の可能性を試す前に、才能がないと決めつけるのは愚かなことだ。

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