期末試験が終了し、夏休みまでのカウントダウンが始まった。美術部に来ていた俺はそこで直近の悩みである「水着」について相談した。
節約の名のもと、学校指定の水着で済ませるのは許されるのか。
この問いに答えを得るべく、俺は美術部の先輩たちに意見を求めた。
「学校指定の水着で問題ないですかね?」
そう尋ねた俺に、三人の先輩たちはあっさりとこう答えた。
「行ったことがないからわからない」
三人の先輩たちは、揃ってそう言い放つ。
高校に入ってから、彼らは授業以外でプールを行ったことがないらしい。つまり、彼らもまた学校指定の水着以外の選択肢を持ちあわせていなかった。
しかし、俺はこの絶望の淵から光を見出し、ある策が形を成した。
「だったら、三人で遊びに行ってみては?」
俺の提案には理があった。以前聞いた、ガーディアン先輩の美術部の皆と遊びたいという願望を俺は忘れていなかった。
ついでに三人にプールの様子を見てきてもらい、施設利用者がどんな水着を着ているか調べてもらうのだ。
「来年は受験で忙しいでしょうし、この夏くらい思い出を作ってみるのもいいんじゃないですか?一回くらい行ってみたら?」
普段は必要以上に喋らない俺が、何かに取り憑かれたように言葉を連ねる。
そんな俺を見る先輩たちの視線は冷たく、いらぬ世話を焼きたがる親戚の叔母を見る俺の瞳と同じだった。
「俺は構わないけど二人は?」
ガーディアン先輩が二人に問いかける。
「私は別にいいけど」
「私もいいよー」
あっけなく了承の言葉がでてきて、俺は心の中で静かに勝利を確信した。
「じゃあ後で、他のお客がどんな水着を着ていたか教えてください」
そう言った瞬間、空気が張り詰めた。ファインダー先輩が静かに口を開く。
「君は先輩たちを下見に使うつもりだったのかな?」
冷たい声と鋭い視線に、俺は思わず一歩引いた。
そして追い討ちをかけるようにディスパーサー先輩が笑みを浮かべて言う。
「よし、こいつも連れて行こう」
ディスパーサー先輩の声は軽快だったが、強制力は絶大だった。
ガーディアン先輩に助けを求める視線を送るが、俺を裏切るように笑みを浮かべて言う。
「いい考えだな」
彼らはこの展開を楽しんでいるように見えた。
こうして、策謀は失敗に終わり、俺も先輩たちと共にプールへ行くことが確定した。