影より出ずる者

深淵教典

昨日の帰り際、グループチャットを作るという提案に俺も巻き込まれ、なんとなく交換した連絡先。

やはり、メッセージアプリ内でも俺は影法師でしかなかった。

彼らの軽快なやり取りが流れてくる中、俺の画面はただ沈黙していた。メッセージを打とうとしたが、テンポが早すぎて結局送れたのは短いスタンプ一つ。

それすらも会話の波に飲まれ、見事に無視されたような気がして、俺はさらに深い闇に沈んだ。

気まずさという名の呪いは、俺の中で着実に広がっている。俺は、このまま影法師として存在し続けるしかないのか。




今朝、教室という戦場へ足を踏み入れた俺には、昨日のファミレスという魔界の記憶とグループチャットの失態が胸に重くのしかかっていた。だが、

「おはよう!」

声をかけてきたのは、昨日一緒にファミレスに行ったクラスメイトだった。

その挨拶は、人を包み込むような温かさを持っていた。

続くようにして、ファミレスにいたクラスメイトたちも次々と「おはよう」と声をかけてくれる。俺は「おはよう」と返したが、その言葉は教室のざわめきに掻き消されたように感じた。

俺は己の幻想に囚われていたのかもしれない。

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