通常授業が始まり、俺の高校生活が本格化した。母が丹精込めて作ってくれた弁当を、静寂の中で食すつもりだった。しかし、運命の歯車はまた狂い始める。
「よかったら一緒に食べないか?」
話しかけてきたのは、あの日、ファミレスに誘ってきた優男。軽やかな口調で話しかけてきた彼に流される形で、彼の後ろの席に座る日焼けした運動部らしき男ともに、学生食堂へと導かれることになった。
移動中、一抹の不安が頭をよぎる。学生食堂で弁当を広げても許されるのか?高校の掟に触れることはないのか?そんな思考を巡らせつつ、俺は流れに身を任せるしかなかった。
食堂の卓には、深淵の導きにより六人の男女が集った。量産型女子高生、ギャル、眼鏡の女子、日焼けした運動部らしき男、俺、そして誘ってきた優男だ。
「夢幻の体現者」(ドリーマーズ・ハイ)――量産型女子高生。よく見る髪型、よく見る鞄、制服の着こなしや持ち物は流行りを押さえている。
「蜃気楼の爪」(ネビュラス・ファング)――ギャル。茶髪、派手なネイル。その指先は幻獣の牙のように煌めき、何者にも囚われぬ自由を象徴している。
「銀の叡智」(シルバー・サイファー)――眼鏡の女子。沈黙の奥に秘められた叡智を感じる。銀縁眼鏡のレンズの向こう側、彼女は何を見つめているのか。
「終わりなき大喰らい」(グラトニー)――運動部らしき男。大盛りのカレーライスを豪快に食べる姿からは、底知れぬ力を感じる。
そして、
「常識破りの先導者」(ディスラプト・ヴァンガード)――優男。
陽の者は陽の者、陰の者は陰の者。学校では、同族、またはそれに近い者でパーティを組む。それがこれまでの秩序だった。だが彼は、その境界をあえて無視し、異端を混ぜ合わせた。まるで何かを企んでいるかのように。
……考えろ。常に最悪を想定しろ。
これは俺を弄ぶための舞台か?異端者達の中に、俺を放り込むことで笑い者にしようという魂胆か?
油断はしない。
だが、俺は確かに「何か」を感じた。この集いには、意味がある。
この日が、新たな物語の序章となることを、本能が告げていた。