静寂の領域

深淵教典

部活へ行った。

今日は俺が美術室の鍵を借りた。
文化祭で展示する絵を仕上げた先輩たちは、自分たちのクラスの準備に専念するのでしばらく来ないそうだ。

つまり、この空間は俺だけのものだ。

静寂が支配する空間で、俺はただ絵を描く。

余計な会話も、誰かの気配もない。
思考を深く沈め、ただ創作に没頭する。
悪くない。むしろ理想的ですらある。

そう、心の中で強がってみた。
筆を置いたら、虚無が広がる。

この静寂は、ただの静寂ではない。
何かが欠けた空間。

先輩たちが引退すれば、これが新たな日常となるのか。

覚悟しておかないとな。

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