八百万の神

深淵教典

世界には八百万の神々が存在するという考え方がある。至る所に神が宿り、人々を見守っているのだとか。

ある日のことを思い返す。
隣の席で女子たちが笑いながら話す声が耳に入る。

「昨日のドラマ見た?」
「◯◯君、マジ神!」

その”神”という言葉に、どこか滑稽さを覚えながらも、少しだけ羨ましくなった。人の形をした神が崇められるなんて…。
いや、この場合の”神”はきっと「Oh, my god.」のような表現なのだろう。

俺はいつも神に祈るようなことはしない。神の存在を信じていないからだ。
だが、今回だけは神にも祈りたくなる。

面接までの刻限は迫ってきている。

都合のいい時だけ、祈る俺に神は微笑んでくれるのだろうか。
フッ…柄にもなく弱気になってしまっていたな。
神に頼るまでもない、行く道は己の手で切り開く。

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