深淵教典

叶わない願い

文化祭の準備期間に入り、六芒星の女性たちと美術部の先輩たちは各々の持ち場へと消えた。俺たちのクラスはいつも通りだ。授業が終われば、帰宅するなり、部活へ向かうなりしている。俺たち三人も、いつものようにファミレスへ集った。「他のクラスを見てたら...
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偽りの仮面と再起の光

新学期から、部活中にガーディアン先輩が勉強に励むようになっていた。彼の休憩中に文化祭で何をするのか、何気なく問いかけた。「何もしないかな」何もしない? まさか先輩も休憩所…?「そうだろ?」とぼけた様子でディスパーサー先輩に話を振る。「そうだ...
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宿命

異端の六芒星たちと集う、お馴染みの空間。その名はファミリーレストラン。そろそろ、この集いに相応しい名を考えるべきかもしれない。話題は文化祭。彼女たちのクラスはお化け屋敷を創り上げるという。その言葉に、僅かな羨望が芽生えそうになる。「休憩所?...
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休憩所

9月27日の文化祭。俺たちのクラスは「休憩所」をすることになった。学校生活に疲れた者たちに安息の場を提供する……建前はそうだ。実際は、最低限の労力でやり過ごすための選択。机と椅子を並べるだけで完結する怠惰の産物。何か提案すれば、その瞬間に責...
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限界

今日は始業式だった。教室に足を踏み入れた瞬間、肌に馴染んだ空気が流れ込む。見慣れた光景のはずなのに、どこか違う。体育館で校長の言葉が響く。ただの音の羅列に過ぎず、意識に刻まれることはない。担任の声も同様だ。形式的なやり取りに、特筆すべきもの...
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天啓

夏休みが終わる。昨日、グラトニーからの連絡があった。ヴァンガードとともに、ラーメンを食べに行くことになった。最後の一日。何も起こらずに終わると思っていたが、思わぬ形で俺の夏休みは幕を閉じることになった彼は己の労働の対価を、食に捧げているらし...
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蒼の楽園

異端の六芒星たちと、プールへと足を踏み入れた。日程の調整に手間取り、実現したのは夏休みの最終週。先輩達との経験を活かし、ただの市民プールではなく遥かに広大な海水プールを選択した。しかし、その分出費も大きかった。俺たちは着替えを終え、広場に集...
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不完全な闇

灼熱の太陽が空を支配する中、先輩たちとプールに行った。合流するなり、装備の確認が始まる。ファインダー先輩とディスパーサー先輩が俺の服装をじっくりと観察し、「成長したな」とでも言いたげな顔をする。まるで師匠がが弟子の成長を喜ぶような、そんな表...
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水面に揺れる

今日は水着を買いに行った。数日前、ガーディアン先輩から連絡があった。先輩の友人によると、指定水着で海へ赴く者は極めて珍しいそうだ。「一緒に買いに行くか?」そう誘われたので承諾した。バイトも始めたし、資金面は問題ないだろう。指定の時間に都会で...
深淵教典

精神機械化

ティッシュ配りのバイトをした。それは、渡すだけ。ただそれだけだが、向き不向きがあるだろう。しかし、俺は発見した。この仕事の極意を。それは、感情を封印し、意思を捨て自らを配るだけの機械へと変えることだ。断られようが無視されようが、何も感じない...