過去の手記 魔術大全 力の目覚め

過去の手記

深淵を覗いたことはあるか?
僕はある。
きっかけは、信じていた友の裏切りだった。いや、今となっては「かつて」信じていた、と言うべきだろう。あの瞬間、何かが音を立てて崩れた。

同時に、僕の中で眠っていた力が目を覚ました。

かつての僕なら、怒りや悲しみに囚われたかもしれない。だが今は違う。むしろ感謝しているくらいだ。もしあの出来事がなければ、僕は檻の中で、何も知らぬまま生き続けていたのだから。

この力を使えば、停滞した世界に変化をもたらせるだろう。だが、僕はまだそれを完全には制御できていない。制御できぬ力を振るうのは愚か者のすること。今はまだ解放すべき時ではない。

裏切り者への復讐? そんなものに価値はない。過去に縛られ、自らの可能性を閉ざすなど、あまりに無意味だ。

やるべきことは他にある。

この力の本質を知り、さらなる高みへと到達する。

深淵の先に何が待つのか――

それを知るのが、今は何よりも楽しみだ。

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