終業式を終えた俺たち異端の六芒星は、映画館へと足を踏み入れた。
だが、この空間は俺にとって牢獄にも等しい。六人の見たい映画が完全に一致することなどありえないからだ
今回も例外ではなく、誰かが己の魂を押し殺さねばならなかった。選ばれた映像作品に興味を抱かぬ者は、ただ時間と金銭を捧げ、二時間を虚無へと投げ捨てる。今日そこに俺の魂はなかった。
そして、さらなる苦行が待ち受ける。映画を見終えた後の感想の共有という名の拷問。
「面白かった」「つまらなかった」
その言葉が刃となり、互いの感性を抉る。
己が心を震わせた映画が、他者にとっては凡庸な映画だったりする。
そんな現実を突きつけられるくらいなら、最初から無難な言葉で済ませた方がいい。
「俳優を褒める」
演技が素晴らしい、表情が印象的。俺は浅く、軽く、表面だけを撫でる言葉を放つ。
これでいい。これが最適解だ。
その後、喫茶店へ移動。
映画の話題は薄れ、何気ない雑談をしたりする時間がはじまった。いつも通り。
これが俺の日常なのだろう。