体育祭

深淵教典

運動の祭典、体育祭。
恵まれし肉体を持つ戦士たちが活躍する戦場。
俺にとって体育祭とは、ただの退屈な催しに過ぎない。

見どころがあるとすれば、せいぜい知り合いが出る競技くらいか。
それ以外に興味はない。
この感覚が間違っているのか、それを決める権利は誰にもない。
だから、応援しないだけでノリが悪いと言われても困る。
人の感覚に正解はない。それゆえに、多数派こそが「正義」となる。
少数派は奇異の目を向けられる。
それだけの話。

俺は興味のないクラスメイトの競技を、ただぼんやりと眺める。
暇だった。知り合いが戦場に立てば、わずかに意識が引き戻される。
だが、観戦で熱くなれる性分ではなかったので、静かに見守った。

しばらくすると俺の出番が来る。
異端の六芒星の声援が響く。
それを背に、俺は戦場へと足を踏み入れた。


大縄跳び。

開始の合図とともに跳ぶ。
舞い上がる足、空間を切り裂く縄の音。
カウントが増えるにつれ、疲労も蓄積されていく。


縄が止まった。
視線を落とす。縄の位置が示す事実、引っかかったのは俺ではない。
俺は足を引っ張らなかった。それだけのことに安堵した。


勝利など最初から求めてはいなかった。
迷惑をかけない、それが俺の目的だった。
こんな思考に囚われる者が、体育祭を楽しめるはずもない。

祭典は幕を閉じ、六芒星内での対決は俺たちが敗北した。

だが、それはわかっていたこと。
最初から求めていないものが、手に入るはずもないのだから。

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