来週、中間テストが控えている。
その対策として、俺たちは魔界。かつてそう呼んだファミレスに集った。
今では馴染みの酒場のように心地よい空間となった。
酒場にはいったことがないので想像でしかないが…。
今回の集いには、ヴァンガードとドリーマーの姿はない。二人は、大人数だと集中できないと言い残し、一人で勉強することを選んだ。別の次元で修練している。
俺自身も、他者と机を囲むなど、これまで考えたこともなかった。
休憩時間、ふとした流れで彼女たちの過去を聞く機会があった。
ファングとサイファーは近所に住んでいた。中学生時代、待ち合わせをするわけでもなく、毎朝一緒に通学していたいう。学校では異なるグループに属しながらも、朝の何気ない会話が彼女達の仲を深めていったそうだ。
それに加えて、ファングは当時属していたグループ内の”偽りの調和(フェイク・ハーモニー)”に疲れ果てていた。絶えず気を遣い続けることでしか保てない関係。その重圧に、彼女は疲弊していた。
同じ高校、同じクラス。自然体で接することができるサイファーと過ごすようになるのは、ある意味で必然だったのかもしれない。
そう思っていると、不意にグラトニーが口を開いた。
「それ、めっちゃわかる。」
彼の言葉には、同じ苦しみを経験した者だけが持つ深みがあった。彼もまた、中学時代の部活動で歪な人間関係を経験していたという。絶えず他人の顔色を伺い、空気を読み続ける日々。それが彼を蝕んでいたのだ。
彼らは本能的に空気を読み、適応する術を知っているのだろう。だからこそ、俺のような陰の者とも、自然と調和を生み出すことができるのだ。
勉強会というものも、悪くはなかった。これまで独りで黙々と進めることを良しとしてきた俺だが、何気ない雑談が息抜きになるという感覚を初めて知った。
また勉強会があれば、俺は参加するだろう。