世界の選択

深淵教典

街はハロウィンの装飾品がちらほら見受けられた。
果たしてどれほどの者が、この祭の本質を理解しているのか。
企業の思惑に踊らされる操り人形が大半だろう。
そう考えると、どこか冷めた気持ちになる。

それはそれとして、俺たちは”甘美なる宴(ケーキ・バイキング)”へと足を運んだ。

店の前には列ができていた。
見渡せば、六芒星の男たち以外は女性ばかり。

この場違いな空気に、妙な背徳感が忍び寄る。

入店し、席に着く。
メニューにはケーキだけかと思いきや、パスタやカレーがあった。
だが、まずは目的の甘味を注文した。

甘美なるケーキ三個ほどを堪能したが、甘さに支配された口内が別の刺激を求める。

俺は、パスタへと手を伸ばした。

その後、再びケーキへ戻ろうとするも、既に限界は訪れていた。

「甘い物は別腹」などと言うが、最初に甘い物を口にすればその別腹から埋まっていくのが道理。

俺とヴァンガードは、他の者たちを残し早々に戦線を離脱した。

話題は進級時の文理選択へと移る。
ヴァンガード、グラトニーは理系。ドリーマー、ファング、サイファーは文系。
そして俺もまた、文系を選んだ。

「なんで二人と同じ理系を選ばなかったの?」
サイファーの問いに、俺は答える。

仲間と過ごす時間を優先して苦手な分野を選び、茨の道を行くか。得意な分野を選び、良い成績を修めて自分の未来ために生きるか。
その二つを天秤にかけて選んだ道だった。

二人とは卒業まで同じクラスになることはない。
だが、それで縁が切れるとは思わない。
そんなことを素直に語る自分がいた。

俺は変わった。
いや、正しくは本来の自分を取り戻したと言うべきか。
他者を信頼するかつての自分へと。

この先裏切りの刃が突き立てられることなど、幾度でもあるだろう。
それを受け止め、歩み続けること。
それが、この世界で生きるということなのかもしれない。

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